馬花333


中央競馬クラシック三冠 3歳牡馬

第一戦のGⅠ皐月賞に出走するためには優先出走権を獲得するか、もしくは賞金を獲得するか

皐月賞への優先出走権はGⅡレースの弥生賞と、同じくGⅡのスプリングS(ステークス)に設定されていて3着までに入着したならば、それが与えられる。

もう一つリステッド競争の若葉Sで2着以内としても皐月賞出走が叶う

リステッド競争とは、GⅠ〜GⅢの重賞に次ぐ重要なレースとして格付けされたレースだ

すなわち、GⅠ、GⅡ、GⅢ、リステッド、オープンへと、格の高い順。

優先出走権で8頭の枠が決まるGⅠ皐月賞

フルゲートは18頭だ

残りの10枠に関しては収得賞金の多い順に出走資格が与えられる

収得賞金はレースで勝利したり、重賞で2着以内に入着すると与えられるので、当然活躍した馬の獲得した賞金は高額になる

必然的に強い馬達が集うのが皐月賞であり、GⅠ競争と呼称される、大レースなのである

卯月は下旬

GⅠ日本ダービー

東京優駿とも呼ばれるこのレースは、3歳牡馬クラシックの第2戦

日本ダービーに出走するためには、皐月賞で5着以内に入線すること

GⅡ青葉賞で2着以内に入線すること

リステッド競争プリンシパルSで1着となること

優先出走権8枠

栄光のフルゲートは18頭

皐月は末

2034/3/12/日

「3着や!」

「あー!残念!惜しい!」

「バッテン、H1虎杯の優先出走権を獲得したばい」

「まあまあだな」

「お兄ちゃん、もっと喜んでよ。笑ってわらって」

「ふん、アリ。俺に絡むな」

「そうだ、そうだな。ハミル牧場の生産馬がHⅠ虎杯に出走できるんだ。牡馬四冠クラシックの第一戦だぞ」

静岡ハミル牧場の事務所でユタタは拳を握りしめた

ヨウコは感慨深い様子で両の手の平を胸に当てている

マメドはソファで足を組みながらテレビを見つめている

「よかたい。H2英雄賞で3着なんてすごか。大健闘ちゃね」

兄妹のウリとアリ

ソファの後方では妹アリが兄ウリの笑顔を誘い出そうと絡みついている

「ヨウコ、ハミヤの戦績はどんなだった」

「えーと。新馬勝ったでしょ。H3パンジーレース4着。H3シクラメンステイクス4着。それからHⅠ不死鳥杯4着。で、今日のH2英雄賞3着」

「頑張ってるな、ハミヤ」

「あんた、あんなダメだって言ってたじゃない」

「それは!叱咤しただけで」

「でも早めに新馬勝ちできたから。出走頭数が少ないうちに翔賞レースに出せたから」

「そうだよ。新馬勝ちは、9月だったか。順調にレースに使えたからな。H先生に感謝しないと」

「うん」

U字型ソファの中央に腰掛けるマメド

左にユタタ、右にヨウコが座っている

「しかし、1勝でよくH1虎杯の出走まで漕ぎ着けたっちゃね。えらかね」

「そうだよ。ハミヤの収得賞金は新馬勝ちの400万だろ。賞金としては条件クラスだからな」

「そうね。HⅠ不死鳥を勝ったアルゼンチノサウルスなんて、そのあとのH3アルストロメリア賞も優勝したから。ええと、ちょっと。5,950万だわ」

「よかよか。四冠クラシックのスタートラインは一緒たい」

誰かが息を飲んだ、喉笛が切られた

「H1虎杯で4着。いや、5着だっけ。入ればさ。熊杯だよな」

「栄光のゲート」

女は手を乳に

来年には馬花(ウマハナ)が

再来年にはハミヤの妹ピンタも

繁殖牝馬の椿(ツバキ)もいるし

ハミヤとピンタの母ミノリも健在だ

馬花の母ミソラは天国に逝っちまったけど

いっちゃんいい席からさ、

馬花332

こ、これは

いったい

どうした

ハミル

みんな

見てくれ

おお!

うまそうだ!

待て!

罠かもしれない!

なんだと!

待て

違うんだ

みんな待ってくれ

これはなんだ

ユメシャ

どうした、ハミル

それはピーマンにニンジン、しいたけに・・

いや

この棒だよ

ああ

それは箸だ

はし

ああ、

俺たち人間の道具だ

食事を摂る時に使うんだ

見てろ

ハミル、ワエハ、コルク、カンナ、バーヘン

キサマ様

こう使うんだ

人差し指と中指に挟む

食べ物を掴む

口に運ぶ

これが、箸

俺たち日本人の

誇り高き正義の棒だ

正義の棒

そうだ

これが人生を生き抜く

我々に与えられた最大の武器

武器

そうだよ

これを使って

人生と戦うんだ

俺にも使えるのか

ハミル・・・・・・・・・・・・・

待て!

餌付けは禁止だ!

キサマ様

ハミル

これは油揚げって言うんだよ

大豆でできてる

豆腐を薄切りにして揚げて作られる

人の味を覚えさせるな!

降りてくるぞ!

ワエハ

ほら、見てごらん

ハミル

おいしそうだ

そっちじゃない

はし

やめてよ!

見てられない!!

おろして、ぼうを!

コルク

仮定の話をしているんだ

食べてごらん

ハミル

やめろ!!

やめるんだ!

カンナ

いいのか

パチン!

いたい

バーヘン!

何をするんだ

ほら、箸だよ

ユメシャ

ハミル

仮定の話をしているんだ

夢の話をしているんだ

なあ、ハミル

この棒がお前達、俺達を救うかもしれないんだ

やめとけ!

ユメシャ!

その領域には入るな!

無知で踏み込むな!

うるせえ!

キサマ様

俺だってやりたかねえんだ!

始めちまってんだ

避けて通れねえだろ!

ユメシャ

キサマ様

ゴキブリ野郎

好物は!

油じゃな

使用後の油が好きじゃな

ワエハ

蝿!

な、生ゴミ

腐敗物

カンナ!

俺は血じゃないんだ!

俺は男だし、血は吸わない

花の蜜だ

コルク!

鳥、魚、貝、ザリガニ

バーヘン!

カエルやトカゲやクモやら昆虫やらだよーん

ハミル!

熊!、

・・・・

お腹空いたか

空みたいだ

箸を使えたらどうなる

箸、俺が

炒めてある

野菜炒めだ

野菜炒め

調理された料理は

お行儀が良くなる

はしをさ

わたし

スプーンも

人間なんて。ら

フォークも

 

やりたかねえ、別に

いやー、というわけでね

ハミルさん

やっちまいました

まあまあ、仕方ないですよ

それはーこればっかしはね

そう!そうなんですよ

ずいぶん前からやってるんです

熊物語ですから、

くまったの前からですから

もう一回

クマッタ

こうか

クマった

こっちか

くまッタ

まあまあ、

いいじゃないですか

ウンさん

ええ、ええ

でももうやる以上は

少しずつ勉強していくしかないですよ

はあ、だりい

てか、こええ

何を言ってんねえ

ハミルさん

やる気じゃないですか

当たり前だの

こうなった以上はですね

私も清水の舞台から飛び降りる覚悟でね

え。え

なんて言いました

ハミルさん

なにがですか

私も、清水の舞台から飛び降りる覚悟でくまッタに取り組むと言ってるんです

清水の舞台ってあの京都の

当たり前だのく

ハミルさん、ごめんなさいね

ハミルさんはね、清水の舞台まで辿り着けないんです

何を言ってるんです

おそらくその前に

何を言ってるんです

まあ、いいですいいです、

いいです、賛成です、一緒に清水の舞台からね

あなたはいいですよ

そんなこと言わないでください

ハミルさん

私はいいんです

どうせ熊なんですから

野蛮な獣なんですから

ハミルさん!

め!

そんなこと言わない

ボロクソじゃないですか

意思の疎通がね

もう難しすぎて分かりません

だから、くまッタ、なのです

最近の事象を総称して、くまッタ、と呼ぶということですね、ハミルさん

はい

一度は口にしたことがある筈です

その時が来た、って

ハミルさん

箸はさておきね、

スプーンくらいは使えるんですか

私、わたし、あーそうね

それはね、わかりませんよ

試してみないと、

少しわかり合えますかね

何がですか

まあ、餌付けですよ

おっとあー

私ね、触れたくないんですよ

やらなきゃいいじゃないですか

ウンさん

はい!

やめます!

例えばですよ

絶対スプーンを使わないと食べれない

食器をね

ほら!

やめてください!

ええ、

ふむふむ、

覚えていくということですか

少し分かり合えますか

熊と人

ハミルさん

はし

行儀よくなりますか

もう少し勉強してからやってください

いや、それはどうなんでしょう

無知の方がいいと

アイデアに限定すればです

夢の話です

箸使うんですか

そうですそうです

我々熊が

はいはい

いきなりは

スプーンからです

何食べたいですか

ハミルさん

ヨーグルトです

あーいいですね

スプーンね

あ、あ、ごめんなさいね

プリンに変えてもいいですか

本当にごめんなさいね

ダメです

なんか生意気なんですよ

プリンだと

また人間敵に回すつもりですか

そんな違います?

プリンはちょっとね

憎たらしい

はあ

まあ、いいや

馬花331